マッキンゼーが大量新卒採用であっても入社先No.1の理由

就活

就職人気No.1のマッキンゼー

日本支社長として名を馳せた大前研一氏を筆頭に、DeNAの南場智子氏、エムスリーの谷村格氏をはじめ、日本有数の経営者や有名人を輩出している世界No.1コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニー。

日本国内でのコンサルティングファームの先駆けとして確固たるブランド力を築いているマッキンゼーは、今もそのブランドネームに惹かれて就活界隈でも圧倒的な人気を誇ります。

しかしかつてのOB/OGはこぞってこのように愚痴を漏らします。

「僕らの頃は少数精鋭の超優秀なコンサルティングファームだった。だけど今は採用の間口を広げてきたり、ルーティン的な新卒採用をし始めたことで人材の質は薄まってしまった」と。

現に足許の新卒就活市場では、マッキンゼーは新卒を50~70人程度採用するなど、ファームの拡大に伴って大幅に採用人数を拡大しています。

確かにそれは黎明期⇒拡大期に会社が入っていくにつれて、数年前であれば確実に落ちていたであろう学生も採用されてしまっているというのは事実なのかもしれません。

しかし果たして大量新卒採用は、会社にとってマイナスなのでしょうか?

または個人のキャリアや成長にとってマイナスなのでしょうか?

筆者の独断と偏見に基づいて、今のマッキンゼーに新卒入社することで得られるであろう経験やスキルを解説していきます。

マッキンゼーはなぜ大量新卒採用をするのか?

そもそも、なぜマッキンゼーは大量新卒採用に踏み切っているのでしょうか?

大量に新卒を採用することはすなわちコストが増えることになりますから、常識的に考えたらそれ以上に売上高が伸びる見込みがあるということです。

既存の社員の稼働率が常に100%前後であるにもかかわらず、リソースが足りずに受注を断ってしまう案件が沢山あるということ。

どうやらこれはマッキンゼーに限ったことではなく、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)やベイン・アンド・カンパニー等の戦略コンサルでも同様の現象が起こっています。

BCGは新卒採用の間口はやや狭め気味ですが、代わりに中途採用の間口を広げて対応しています。

コンサルティング市場の規模と成長率

https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ46448620

前提としてコンサルティング市場は現在成長市場に位置付けられています。

国内の市場規模は8,000億円前後と言われており、2024年には1兆円に達するといわれています。

年平均成長率(CAGR)は2019⇒2024年にかけて4.0%と堅調な伸びが予想されており、今後も堅い案件需要が見込まれます。

市場の要請があるからこそ、そこに属しているマッキンゼーも恩恵を受けており、案件パイプラインが飛躍的に拡大しているのです。

コンサルティング案件の質が変化

その中で特筆すべきなのはコンサルティング案件の性質が変化している点です。

いわゆるDX化の流れに乗る形で特にデジタル関連のコンサルティング案件が非常に増えており、以前のようなピュアな戦略案件は減少傾向にあるとされています。

使い古された言葉ではあるものの、いわゆる経営の上流(戦略)の案件から下流(実行)の案件へ需要がシフトしており、特にITやデジタルの文脈で社内導入を進めていくようなプロジェクトが増えてきているのです。

現にBCGは傘下にBCGデジタルベンチャーズという子会社を持っており、ここはコンサル出身者だけではなくデザインファームやベンチャー出身者も多く参画するようになっています。

より下流の案件を受注していこうという気概が見えており、コンサルティング市場の変化を如実に表した事象と言えるでしょう。

こういった「商品ラインナップ」の拡充も勿論重要ですが、コンサルティングファームのビジネスモデルを支えているのは何より「人材」です。

コンサルティングファームは典型的な労働集約型産業であり、とにかくコンサルタントを採用し続けることで売上高の拡大が目指せるわけで、案件を受けられる余裕を残しておくために人材採用を強化して準備しておく必要があるのです。

グレイヘアよりも新卒の柔らかい頭脳

マッキンゼーはBCGや他のコンサルティングファームと異なり、世界的に新卒採用にこだわってきた異質なファームでもあります。

マッキンゼーの創業者はシカゴ大学経営学部教授のジェームズ・マッキンゼーですが、現在のマッキンゼーの基礎を作り上げたのはマーヴィン・バウワーです。

日本でいう戦前~戦後に活躍したマッキンゼー社長であり、彼がコンサルティング業界にて初めて新卒採用を開始したとされています。

それまでは「コンサルタントはグレイヘア(白髪のベテランビジネスマン)が担う職業だ」というのが一般常識でしたが、マーヴィン・バウワーはこの常識を破り新卒採用の強化に踏み切ります。

「グレイヘアの経験と知見を活かすのも重要だが、前例にとらわれない柔軟な打ち手を編み出すには、まだ何物にも染まっていない柔らかい頭脳が必要だ」という哲学を持っており、見事この戦略が成功します。

こういった新卒採用文化は日本国内でも根付いており、黎明期を脱した2000年以降は毎年一定の新卒採用を実施していました。

その文化を重視してか今もマッキンゼーは新卒採用に力を入れており、前述の市場拡大に相まって更に新卒採用人数を増やしています。

もしかするとそろそろ「マッキンゼーの新卒100人」という時代が来るかもしれず、コンサルティングファームの時代が変わっていくのを目の当たりにできるかもしれません。

現在のマッキンゼーの組織体制

さて、このようなマッキンゼーの大量新卒採用の流れを受けて、マッキンゼーの組織はどのように変わってきているのでしょうか?

これまでは少数精鋭の徒弟制度のような体質がプロフェッショナルファームの常識ではありましたが、大量新卒採用によって確実に社内の雰囲気は変わってきています。

日本支社の社員のうち3~4割は新卒1~2年目

確実な数値でなく申し訳ないですが、マッキンゼー日本支社はここ数年大量新卒採用を繰り返しているため、人口ピラミッドとしては発展途上国のような構成になっています。

「富士型」「つりがね型」「つぼ型」などと言われる人口構成でいえば、確実に「富士型」組織になっています。

このように裾野が広がってくると、新卒3~5年目前後の中堅ジュニア層はどのような煽りを受けるのでしょうか?

中堅ジュニアをどんどん昇進させてチームアップさせる

有象無象の新卒BA(ビジネスアナリスト/入社1年目はこのタイトルで始まります)がひしめいているので、それを統率する中堅層が慢性的に足りていない状況になっているのが今のマッキンゼー。

したがってマネジャー直前のコンサルタントを社内的にどんどんマネジャーに昇進させていき、ジュニアを束ねるポジションに上げていく流れが出てきています。

1つの案件をマネジャーが実務担当で束ねるとすれば、BAは2~4人程度アサインされるのが平均的ですが、そのBAを束ねる人材が不足しているため中堅ジュニアはどんどんマネジャーに上がれる仕組みになっているのです。

マネジャーとなれば年収は1,000万円を超えてくるほか、案件コントロールの役割を担えるためコンサルティングという仕事としても非常に楽しくなってきます。

より早くマネジャーを目指せる組織になっているわけですね。

しかしマネジャーはジュニアロールをこなすことが多い

ただしマネジャーに昇格したとはいえ、仕事が楽になっているかというとそんなことはありません。

というのも下に付いているBAが入社ほやほやの1~2年目なので、ハッキリ言って戦力としては半人前だからです。

結局彼らが出してきたアウトプットに対して一定の加筆修正は必要であるほか、クライアント対応についてもマネジャーが責任を持たなくてはいけません。

部下が無力でそれをテイクしなくてはならないうえ、マネジャーロールもこなさなくてはいけないとなると、マネジャーは非常にきつい仕事環境であると言えます。

特にPEファンドのビジネスDD案件ともなると、ファンド側は死ぬほどコンサルティングファームを使い倒そうとしてきます。

2徹、3徹が慢性的に続くようなこともあり、マネジャーながらジュニアコンサルタントのような働き方となっている人が多いようです。

マネジャーから漏れた仕事はBAが引き取るしかない

しかしどうしてもマネジャーのリソースが限界を迎えた際は、BAが対応するしかありません。

新卒1~2年目の見習いコンサルタントですから、正直アウトプットの質は最初はいまいちでしょう。

しかしマネジャーがそれをレビューできる時間が残っていないので、BAが作った資料がクライアントにそのまま渡る機会も少なくありません。

そうするとクライアントから叱責されたり追加で質問が来たりと、否が応でも矢面に立たされることになります。

こういった矢面に立たされる経験こそ、BAにとっては何事にも代えがたい貴重な経験になるのです。

裁量権は少ないよりも多いに越したことはなく、特に若いうちからこのような経験ができることは非常に喜ばしいことです。

現に1つのプロジェクトの開始前と終了後では見違えるほどに成長するBAが続出するようで、裁量権を持ったうえでいくつもの修羅場を乗り越えた経験はビジネスパーソンとしてのスキルを飛躍的に向上させてくれるのです。

パートナーには最短8~9年で昇進できる

「富士型」組織であることはマネジャー不足にあることは勿論ですが、更にそのうえでのパートナー不足にも繋がっていきます。

したがってマネジャークラスの人間は数年もするとぽんぽんパートナーに昇進できる仕組みにならざるを得ず、優秀な人は最短8年でパートナーにまで上り詰めることが可能です。

23歳で社会人1年目を迎えたとすれば30歳でパートナーを目指すことができ、年収でいえば3,000~4,000万円前後が期待できます。

投資銀行は残念ながらアソシエイトまでは年功序列で昇進することがほとんどのため、8年でたどり着けるのはせいぜいVP(バイスプレジデント/コンサルでいうマネジャー)でしょう。

組織的な問題とはいえ、8年でパートナー、しかも天下のマッキンゼーとなれば、新卒学生にとっては非常に魅力的なキャリアパスだと言えるでしょう。

大量新卒採用時代でもマッキンゼーは良い組織だった

以上、現在のマッキンゼーの社内体制に対する雑感をつらつらと書いてみました。

筆者は勿論マッキンゼーで働いたことはなく、あくまで伝聞ベースでの話ですが、特に若手にとっては今もどんどん裁量権を持ったうえで活躍できる良い仕事環境である可能性は高そうです。

大量新卒採用というシステムを取り入れたからこそ若手にとっては良い組織になっていることは間違いないでしょう。

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